瀬戸内醸造所パスポート 特別取材 - 瀬戸内醸造所株式会社

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INTERVIEW

読売新聞インタビュー

瀬戸内醸造所パスポート 苗木オーナー制度 特別取材

『 農業の価値を伝える
翻訳者でありたい。』

瀬戸内醸造所 代表取締役 太田祐也

旅するワイナリー

瀬戸内醸造所パスポート 特別取材

醸造棟とレストラン棟、屋根に囲まれた四角い玄関口は「瀬戸内の情景を切り取る窓」と呼ばれている。それを抜けると、目の前に真っ青な海と多島美が広がった。

広島県三原市。日本有数のぶどう産地に立つ瀬戸内醸造所のワイナリーは、数年前に廃業した造船所の跡地に建つ。
むき出しのコンクート地面やクレーン跡を生かした庭などに、かつての地場産業の面影が残る。自然豊かな風景に施設が溶け込むようにと、敷地と海の間に柵は設けられていない。

ここでは瀬戸内で採れたぶどうを原料に、産地ごとに単一品種のぶどうや、
一つの圃場(ほじょう)で採れたぶどうのブレンドによりワインを醸造し、素材そのものの純粋な味を楽しめる。

瀬戸内の音を聞きながら、ワイナリーやレストランでゆっくりワインを楽しんでほしい。
ワインの味わいから、様々な産地に思いを馳せてほしい――。

そんな思いが込められた「旅するワイナリー」だ。
新たに始まる苗木オーナー制度も、「一緒に地域との関係性を持ってもらえたら」という願いが出発点となっている。

近しい圃場のぶどうで
仕込む

瀬戸内醸造所パスポート 特別取材

瀬戸内醸造所の創設者で、代表取締役を務める太田祐也さんは25歳でコンサルティング会社を起業し、十数年にわたり、地方創生を専門に多くの仕事を手掛けてきた。
だが、次第に「地方創生は長期スパンで取り組むべきだ」という思いが芽生え、年度単位で完結する自治体からの受託事業だけでは物足りなさを感じるようになっていた。
その一方で、行政の計画策定に携わる中で出会う地域の生産者たちには、リスペクトの念を深めるようにもなっていた。

そんな折、趣味のロードバイクで「しまなみ海道」を走りながら海に浮かぶ島々を眺めていると「この島ひとつひとつにお酒があったら面白いよな」と、ふと思った。
地域に育まれた素材で造ったワインを通して、瀬戸内の風土を知ってもらえるのではないだろうか。「旅するワイナリー」のコンセプトは、こうして生まれた。

醸造経験はなかったが知人のワイナリーが協力してくれることになり、地元の農家を訪ねてぶどうを使わせてもらえないか、思いをぶつけて回った。設立当初から瀬戸内醸造所を支えてきた大番農園(三原市高坂町)の大番尉志さんは「よそのぶどうは絶対に混ぜないという点が気に入った」と振り返る。

瀬戸内醸造所パスポート 特別取材

大番さんが以前、別のワイナリーに協力した時は、傷があるなど生食用には適さないぶどうをワインの原料にするのが普通だったが、瀬戸内醸造所の考え方は真逆。生食用としても出来が良いぶどうを選りすぐって使う。「地域の特産物を最大限に引き立て、良いものをつくる」という太田さんの熱い思いに、大番さんは共鳴した。

昨年、高坂町で栽培されているぶどう「ニューベリーA」を使ったワインが、国際的な品評会「2022 ルクセンブルク酒チャレンジ」の銅賞を受賞した。
瀬戸内醸造所が自社の蔵で初めて醸造したワインであり、生食用に栽培されたぶどうでの受賞は世界でも珍しいという。

「でも」と、太田さんは真剣なまなざしで続けた。
「金賞じゃないと不満なんです」。
農家が手塩にかけて育てたぶどうを最高の形で届けるのが、農業の価値を伝える「翻訳者」としてのワイナリーの役目だと思うからだ。

ワインでぶどう産地を
守りたい

瀬戸内醸造所パスポート 特別取材

ぶどうの栽培には手間暇がかかる。
農家が特に体力と神経を使うのは、5月から6月。伸びた枝を棚線に添わせる「誘引」と呼ばれる作業を行い、房を整え、病気や害虫から守るため小さな実に袋を掛けていく。
8月上旬ごろから始まるぶどうの着色管理も難しく、色づきが悪いとぶどうの価値が下がってしまう。

冷夏や暖冬もあれば、長雨も水不足の年もある。
畑の環境は毎年変わり、「普通だったという年はない」と大番さんは言い切る。

高坂町は約60年前に開拓団が山を切り開き、農地となった歴史がある。
「なめら」と言われる土壌の粘土層は植物が地中に根を伸ばすことを阻むが、
浅く根を張る特性をもつ生食用のぶどう栽培には逆に適していた。
栽培当初は知名度が高くなく、栽培したぶどうを農家自ら売り歩かなければならなかった事情もあり、
切磋琢磨して磨き上げた高坂町のぶどうは、高い品質を誇る。

だが、そんな産地でも最近は農家が減り、多くが後継者難にあえいでいる。
太田さんは増え続ける耕作放棄地を借りてぶどう畑として復活させることで、地域の雇用を増やすことも思い描いている。

農業。醸造。
やってみないと
想像できない

瀬戸内醸造所パスポート 特別取材

太田さんによれば「ワインは農業の酒」だという。
地域に根ざしたぶどう農家がいなければワインの醸造はできないし、土壌に育まれたぶどうの味は、ワインの味わいに色濃く反映される。地域の風土を映し出す鏡のような存在、と言えるのかもしれない。

同じ場所で育った同じ品種のぶどうでも、毎年異なる季候や雨量によって味は変わる。逆に言えば、口に含んだワインの味を通し、そのぶどうが育った環境をイメージできる。
これは「単一地域」「単一品種」あるいは「単一圃場」のぶどうで醸造しているからこそ可能な、瀬戸内醸造所のワインならではの楽しみ方のひとつだ。

「ワインを飲んだだけで栽培時の土壌や気候を想像できる。僕はそれができるようになったので楽しい」と太田さんは言う。
しかし、ただワインを飲んでいるだけで、そうしたイメージができるようになるわけではないという。太田さんが薦めるのは、本で知識を得たり、様々な種類のワインを飲んだりすることよりも、醸造の作業や農業を自分自身で体験することだ。

瀬戸内醸造所パスポート 特別取材

新たに始める「瀬戸内醸造所パスポート 苗木オーナー制度」では、耕作放棄地を使って新たに植え付けるぶどう苗木の成長を一緒に見守ってくれる仲間を募る。
オーナーは、年間通じて醸造や農業に携わり、生産者らと交流できる。家族や友人を誘って気軽に参加してもらいたいと、体験で剪定した枝を使った畑での熾火(おきび)料理などユニークな取り組みも企画している。
太田さんは「農業の価値を感じてもらい、発信してくれる翻訳者を増やしたい」と意気込む。

太田さんには、地域の農家以外にもたくさんの協力者がいる。
「どうして太田さんの周りには人が集まるんでしょうか」と尋ねると、「分からないんです」と困ったように笑った。
太田さんはどこか「一緒に仕事をしたら楽しそう」と思わせてくれる人だ。
この船に乗ればきっと、何か楽しいことが起きる――。
みんな、そんな風に感じているのかもしれない。

– 瀬戸内醸造所パスポート 苗木オーナー制度 特別取材 –
取材・撮影 読売新聞大阪本社 役員室地域戦略部
-2023年冬 取材-

瀬戸内醸造所のこだわり

瀬戸内醸造所パスポート 特別取材

瀬戸内の風土(テロワール)を醸造するワインづくり。口に含めば、SETOUCHIへ旅をさせてくれるワインを目指しています。
フラッグシップである、一つの銘柄ごとに単一品種で仕込んだワインシリーズに加え、同じ畑で取れたぶどうのみを混醸(異なる品種のぶどうを混ぜて醸す)するフィールドブレンドなど、素材や畑の特性をそのままに表現する果実味たっぷりのワインを造っています。
アルコール度数や酸味を補う「補糖」「補酸」は原則として行いません。ぶどうの糖分のみでできる瀬戸内醸造所のワインはアルコール度数は穏やかで、軽やかに飲めるお酒です。

昨年、自社醸造施設稼働初年度に製造した「2021 三原ニューベリーA」が「2022 ルクセンブルク酒チャレンジ」にて銅賞を受賞しました(三原市高坂町「大番農園」「三原のちいさな葡萄園 仏通寺ぶどう Rocto」で栽培されたぶどうで醸造)。

瀬戸内醸造所パスポート
苗木オーナー制度

瀬戸内醸造所パスポート 特別取材

瀬戸内醸造所は2023年3月、農業・醸造の体験や見学を年間通じて楽しめる苗木オーナー制度を始めます。
農業や醸造を実際に見ていただくと、ワインとの距離が近づきます。ぶどうの味わいや品質が、そのままお酒となる「農業のお酒」ワイン。日本ワインに興味を持ってくださる方が増えると、産地を守る取り組みにも繋がると考えています。

ワインが皆様の食卓でグラスに注がれるまでに、どんな作業をしているか。
ぶどう収穫や醸造以外に、どんな作業をしているか、ワイナリースタッフの私たちと一緒に体験してみませんか?

植物は病害虫や自然災害などによって被害を受ける場合があります。またお客さまが木を所有する権利ではなく、ワインの頒布とワイナリー体験、お客さまとの交流、その他特典を体験・ご用意する制度です。有効期限は1年間(継続可能)です。

特典

瀬戸内醸造所パスポート 特別取材

おすすめワイン頒布

オーナー口数に応じておすすめのワインをお届けします。
すでに終売になったプレミアムワインが手に入る可能性も。

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瀬戸内醸造所でのワイナリー体験

農業や醸造の体験イベント、ツアーへ優先的にご案内します。圃場やワインの醸造見学・体験を年間通じてできるのは全国のワイナリーでもここだけです。

瀬戸内醸造所パスポート 特別取材

ぶどう農家との交流

ぶどうの味わいや品質が、そのままワインの味わいと品質となる「農業のお酒」ワイン。農家と交流した後にその畑で採れたぶどうのワインを飲んでみましょう。